お問い合わせ

来店予約

不動産に関するご相談、個別に回答します!

投稿日:2025.09.09  
最終更新日:2025.09.09

中古マンションの修繕積立金不足で工事ができない!避けるべき物件の特徴とは?

中古マンション

はじめに

マンションの修繕積立金不足が原因で月々の返済が負担となり、マイホーム破産が起き始めているのを知っていますか?

マンションにとって修繕積立金は重要なお金である、ということを知っている方は多いかもしれませんが、なぜ重要なのか、どのくらい貯まっていればよいのか、把握できている方は意外と少ないです。

修繕積立金の重要性や、購入時に確認すべきポイントが分からないまま、中古マンションを購入してしまうのは危険です。

積立金が不足してしまった結果、月々の支払額が値上げされ、生活費を圧迫してしまい、大規模修繕工事ができず資産価値が減ることも考えられます。

修繕積立金不足によるリスクについて、詳しく解説していきます。

本編

修繕積立金不足の中古マンションで発生する問題とは?

修繕積立金が不足すると発生するリスクは次の3つです。

●修繕積立金の値上げされる可能性がある
●定期的な大規模修繕が行えない
●買い手から「管理不足の物件」と敬遠される

修繕積立金の値上げされる可能性がある

修繕積立金が値上げされると、月々の支払いが増えてしまいます。

修繕積立金の徴収方法は、
●均等積立方式
●段階増額積立方式

の2種類あります。

最近のマンションは、築年数が経過するほどに修繕積立金が段階的に上がっていく段階増額積立方式を採用するところが増えています。

段階増額積立方式を採用する理由は、新築時の修繕積立金が低いため、購入者が買いやすく、分譲業者が売りやすいためです。

段階増額積立方式を採用している物件は、1971年以前築のマンションでは15.6%でしたが、2010年以降は67.8%まで増加しています。
国土交通省の「今後のマンション政策の在り方に関する検討会とりまとめ」によると、
段階増額積立方式を採用したマンションは、長期修繕計画の計画当初から最終計画年までの平均増額幅は約3.58倍です。

(参考)国土交通省|今後のマンション政策のあり方に関する検討会とりまとめ

新築時に毎月8,000円の修繕積立金を払っていた場合、最終的に28,000円を超えます。

これは平均金額のため、修繕積立金の不足分により、さらに高くなるケースもありえます。

国土交通省の「平均30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、

マンション全体の約35%が、長期修繕計画に対して修繕積立金が不足しているとされており、修繕積立金が大きく値上げされる可能性があるマンションも多いことが分かります。。

修繕積立金の値上げにより月々の返済額が負担となり、生活が圧迫されて滞納してしまう事態になるかもしれません。

定期的な大規模修繕が行えない

大規模修繕工事で建物や設備を補修交換していかないと、マンションの寿命は短くなります。

そのため、12〜15年周期で大規模修繕をしなければなりません。

そこで必要になるのが、多額の修繕積立金です。

また、建物は古くなるほど補修や交換する箇所が増えるため、築年数が経過するにつれ、工事費用が高くなる傾向にあります。

「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、1回目の大規模修繕の平均額がもっとも多い6,000万円に対し、3回目になると8,000万~1億5,000万円に増えることが公表されています。

(参考)国土交通省|令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査

そのため、計画通りに修繕積立金を貯められていないと、定期的な大規模修繕が実施できなくなる可能性が高まるでしょう。

そうなると、建物の状態が悪くなり、雨水の内部侵入で鉄が錆び自身に弱くなる大きなリスクに発展します。

そのような危険なマンションを購入する人は少ないため、需要が低下して資産価格の下落にも繋がります。

買い手から管理不足の物件と敬遠される

修繕積立金の不足が続くと、管理不足のマンションと買い手から認識されてしまいます。

今までは、マンションは、立地や築年数、間取りなどで評価・判断されていました。

しかし、近年はマンション管理の重要性に関わる情報が増え、物件の判断材料として管理組合の運営状況も重要視されています。

運営状況がよければ、修繕積立金が当初から計画的に積立され、定期的に大規模修繕を施工でき、生活の質が維持されて資産価値が維持されます。

運営が安定しているマンションは、定期的な工事により建物は使いやすく雰囲気もよくなって、マンション購入希望者も増えます。

需要が高くなると、不動産価格は上昇しやすく資産価格の向上が期待できるでしょう。

逆に管理不足の状態が続くと、建物のひび割れや設備の故障の放置に繋がってしまいます。

専有部分を綺麗な状態に保つように努力しても、マンション全体で見た場合に敬遠されてしまう可能性が高いです。

そうなると、実際の住み心地が悪くなるだけではなく、購入希望者が少なくなり、資産価格の低下を招いてしまう悪循環に繋がります。

修繕積立金が値上がりしやすいマンション3選

実際に修繕積立金が不足し、値上がりしやすい傾向のマンションの共通点は以下の3つです。

●総戸数が少ない
●築年数が古い
●機械式駐車場がある

総戸数が少ない

総戸数が少ないマンションは、修繕積立金が不足しやすい物件です。

戸数が少ないほど、修繕積立金を支払う世帯が減るため、一戸あたりの負担が増加します。

一戸あたりの修繕積立金の支払額は、100戸以上あるような大規模マンションと比べると高くなる傾向にあり、滞納が発生しやすい特徴もあります。

例えば、戸数30戸の小規模マンションを5,000万円で大規模修繕する場合は、一戸あたりの修繕積立金の支払額は総額で約166万円です。

一方、戸数100戸の大規模マンションを1億円で工事する場合は、一戸100万円で済みます。

また、総戸数の少ないマンションは、修繕積立金が値上げされた場合も、一戸当たりの負担額が大きいため注意が必要です。

一気に修繕積立金が高くなると、生活が圧迫されて、住宅ローン破綻に繋がる可能性が高くなります。

築年数が古い

築年数が古いマンションは、補修や交換をしなければいけない箇所が増えるため、多額の工事費用を支払わなければなりません。

国土交通省の「長期修繕計画標準様式」によると

●屋内給水管の補修:19~23年周期
●屋内給水管の取り換え:30~40年周期

で行う必要があります。

(参考)国土交通省|長期修繕計画標準様式

工事費用は、補修よりも取り換えの方が高額になり、一戸あたりの負担額も増額します。

このことから、築年数が新しい物件よりも、古い物件のほうが月々の支払が増える傾向にあります。

また、築年数が古くなるほど、入居者が高齢化するのも、修繕積立金が不足する原因の一つです。

若いうちに住宅ローンを借りて購入し、定年までに返せばよいと、老後の修繕積立金を考慮していなかった人が一定数います。

ローン完済すればすべての支払いが完了する、と老後資金の計画を立てているパターンです。

このような人がいると、年金だけでは修繕積立金が支払いきれずに、滞納してしまう世帯が発生します。

国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果」によると、築年数が古くなるほど、3ヶ月以上滞納する人の割合が高くなるという内容が公表されていることから、築年数と滞納の関係性がわかります。

(参考)国土交通省|令和5年度マンション総合調査結果

このように、工事の負担額の増加や滞納確率の上昇により、築年数の古い物件は修繕積立金が高くなりやすい傾向にあります。

機械式駐車場がある

機械式駐車場は維持に、費用がかかる設備です。

(参考)国土交通省|マンションの修繕積立金に関するガイドライン

検討している物件が4段昇降横行式の50台収容できる機械式駐車場だった場合は、月々の修繕積立金は311,750円必要になります。

世帯数75戸のマンションと仮定し、一戸あたりの修繕積立金が月額4,157円も金額が上がってしまいます。

この物件に30年住むと仮定すると、総額約149万円を支払うことになります。

このことから、機械式駐車場がある物件は、マンション自体の修繕費と合わせて駐車場の修繕費の負担も大きく、住み続ける中で費用が上がっていく傾向にあるため注意が必要です。

中古マンション購入時に確認すべきポイント

中古マンションを購入時に確認すべきポイントは以下の2つです。

●修繕積立金が上がるタイミングを確認しておく
●不動産業者に長期修繕計画書の確認を依頼する

修繕積立金が上がるタイミングを確認しておく

修繕積立金が上昇しやすいタイミングを押さえ、事前に値上げの可能性を踏まえた上で無理のない資金計画を立てられるようにしておきましょう。

タイミングとして以下の時期は注意が必要です。

●大規模修繕の前後
●長期修繕積立金を見直す時

大規模修繕工事を実施する前に、建物の劣化診断を行い、工事にかかる費用を正確に算出します。

正確な工事費用が分かれば、貯蓄されている修繕積立金で工事できるかどうかが分かります。

この時に貯蓄額が足りない場合、値上げして費用を賄わなければいけません。

大規模修繕が完了すると、次回の修繕工事までに修繕積立金を貯蓄できるか再検討します。

工事費用が想定よりも高ければ、計画を見直し値上げをして計画に合わせる必要があります。

このように大規模修繕の前後と長期修繕計画の見直し時には、修繕積立金が上がりやすくなります。

中古マンションの購入を検討する際に、大規模修繕の前後ではないか、計画を見直すタイミングではないかを確認して入居前後の値上げの可能性や資金面での対策を取れるようにしておきましょう。

不動産業者に長期修繕計画書の確認を依頼する

検討中であるマンションの長期修繕計画書を不動産会社に見てもらい、積立状況を確認してもらうことが大切です。

長期修繕計画書とは、将来予想される修繕工事や工事費用を記載した書類です。

30~50年の長期的な視点で作成され、現時点でいくら溜まっているのか、段階的に修繕積立金を値上げすることが、記載されているものもあります。

段階的な値上げが記載されていれば、いつどのくらい上がるかがわかります。

しかし、計画どおりに進むとは限らず、現在の貯蓄額や滞納額の増加により修繕積立金が一気に上がるかもしれません。

長期修繕計画書は、不動産業者でないと確認ができないため、信頼できる不動産会社の担当に確認してもらいましょう。

まとめ

今回は、
●修繕積立金が不足する原因と、不足した場合に起こりうるリスク
●修繕積立金が値上がりしやすいマンションの特徴
●マンション購入時に確認すべき重要ポイント
を解説しました。

修繕積立金が不足すると、月々の支払額が値上がりし、大規模修繕ができずに資産価値が低下するリスクがあります。
特に、総戸数が少ない、築年数が古い、機械式駐車場がある物件は注意が必要です。
購入を検討する際は、値上がりのタイミングや長期修繕計画書を事前に確認し、無理のない資金計画を立てましょう。