はじめに
定期借地権付きの中古マンションは、
通常の所有権付き中古マンションと比較して
2〜3割程度安く購入できます。
しかし、多くの方にとっては
メリットが少ないと考えられます。
本記事では、実際の販売事例をもとに、
ランニングコスト・資産価値・実需・投資の観点から、
その実態をシミュレーションします。
どのようなケースでメリットがあるのかを、
具体的な数字を用いて検証していきますので、参考にしましょう!
本編
定期借地権マンションと所有権マンションの販売価格の違い
定期借地権マンションと所有権マンションでは、
販売価格に大きな差があります。
例えば、2006年築の定期借地権マンション(借地期間2057年まで、残存期間35年※)は、実際には4,500万円で売却されています。
※令和4年(2022年)から居住として試算
一方、同じような築年数・広さ・立地条件の
所有権マンションは6,280万円で売却されています。
この結果から、定期借地権マンションは
所有権マンションに比べて約3割安い価格で
取引されていることが分かります。
定期借地権マンションと所有権マンションの35年間の資産価値比較
定期借地権マンションと所有権マンションの
35年間にかかる費用を試算すると、
以下のようになります。
▮定期借地権マンションのコスト
初期コストは、物件価格に諸費用を加えて、下記の通りです。
【初期コスト】
物件価格 :4,500万円
諸費用 :200万円
初期コスト合計 :4,700万円
月額コストは、定期借地権マンションの場合、
土地の固定資産税はかかりませんが、
借地のため地代が発生します。
管理費、修繕積立金に地代等を加えると、下記の通りです。
【月額コスト】
管理費 :21,900円
修繕積立金 :17,320円
地代等 :15,524円
月額コスト合計 :54,744円
35年合計 :2,299万円
また、固定資産税は、
土地は地主が払いますので、
建物代だけで安くなります。
初めは高くて、古くなると安くなるため、
35年の平均で年間5万円として試算します。
【年額コスト】
建物固都税 :約5万円
35年合計 :175万円
総合計で7,174万円、1カ月あたりで割り戻すと17万809円の支払いになります。
【総合計】:7,174万円
月あたり :170,809円
定期借地権マンションは、
契約期間終了後には更地にして返還する必要があり、
物件の資産価値はゼロになります。
▮所有権マンションのコスト
初期コストは物件価格に諸費用を加えて、下記の通りです。
【初期コスト】
物件価格 :6,280万円
諸費用 :400万円
初期コスト合計 :6,680万円
月額コストは、管理費等、修繕積立金にて下記の通りです。
【月額コスト】
管理費等 :17,700円
修繕積立金 :11,900円
月額コスト合計 :29,600円
35年合計 :1,243万円
固定資産税は土地と建物分も払いますので、下記の通りです。
【年額コスト】
建物固都税 :約5万円
土地固都税 :約10万円
35年合計 :525万円
総合計で8,448万円、1カ月あたりで割り戻すと20万1,142円の支払いになります。
【総合計】:8,448万円
月あたり :201,142円
所有権マンションは、定期借地権マンションよりも
初期費用やランニングコストが高いものの、
35年後も売却が可能です。
▮資産価値を考慮した比較
定期借地権マンションでは35年間で7,174万円かかり、
所有権マンションでは35年間で8,448万円かかりますが、
定期借地権マンションは
35年後に更地で返すため価値がゼロになります。
所有権マンションは35年後には
築50年になっていますが、売却可能であり、
差額の1,274万円以上で売却できれば、
所有権マンションを購入した方が得と言えます。
▮築50年時の資産価値比較
近隣で築50年の同様の間取りのマンションを調査したところ、
3,200万円で実際に売買された事例があります。
この物件は多少リフォームが施されているものの、
一定の売却価格がついています。
所有権マンションの場合、
35年間の総費用と比較すると
1,274万円以上の売却価格が見込めるため、
資産価値を維持できる可能性が高いと言えます。
一方、定期借地権マンションは契約期間終了後に
更地にして返還しなければならないため、
築50年時点での資産価値はゼロとなります。
このように、長期的な資産価値の観点からも、
所有権マンションの方が得であると考えられるでしょう。
定期借地権マンション購入者のシミュレーション
投資の観点から定期借地権マンションを検討すると、
いくつかの課題が浮かび上がります。
例えば、同じ定期借地権マンションが
月額24万5,000円で賃貸に出されており、
年間賃料は294万円となります(下図参照)。
賃貸市場では、定期借地権でも所有権でも賃料に大きな差はないため、
一見すると物件価格4,500万円の方が利回りが良く、
収益性が高いように見えます。(利回り1.9%の差)
定期借地権マンション表面利回り:294万 / 4,500万円=6.5%
所有権マンション表面利回り:294万 / 6,280万円=4.6%
しかし、定期借地権マンションには地代が発生するため、
ランニングコストが高くなる点に注意が必要です。
その結果、表面利回りは高く見えても、
実質利回りでは所有権マンションと比較すると、
約1%程度の差しかない事になります。(利回り1.1%の差)
定期借地権マンション実質利回り:
→294万-(65万6,928円+5万円) / (4,500万円+200万円)=4.75%
所有権マンション実質利回り :
→294万-(35万5,200円+15万円) / (6,280万円+400万円)=3.64%
▮定期借地権マンションは出口戦略(売却戦略)が難しい
定期借地権マンションの最大の問題は、
出口戦略の難しさです。
投資物件として購入する場合、
10年後などに売却し、
投資資金を回収できるかどうかが重要になります。
しかし、定期借地権マンションは契約期間が限られており、
残存期間が短くなるほど売却が難しくなります。
最終的に買い手がつかず、
投下資金を回収できないリスクが高まります。
まとめ
定期借地権中古マンションの購入は慎重に
これまでの検証を踏まえると、
・投資目的では売却リスクが高く、適していない
・若い世代の購入者にとっても、長期的な資産価値の問題がある
・高齢の購入者でも、相続や老後の資金計画を考えると所有権マンションが有利
・住宅ローンが組めないため、十分な現金を持っている人に限られる
・現在持ち家がない人以外にはメリットが少ない
といった点から、定期借地権中古マンションの購入に適した人は非常に限られると言えます。
このように、さまざまな角度から検討した結果、
投資・実需のいずれの面でもメリットが少なく、
定期借地権中古マンションの購入は、
慎重に判断する必要があると言えるでしょう。
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記事監修者
朝倉 大樹(宅地建物取引士)
株式会社ウィローズ 代表取締役
2000年不動産ベンチャー企業入社、28歳で最年少営業部長、29歳で最年少役員に抜擢。上場準備にも携わるが、リーマンショックによる倒産危機を経験するなど激動の20代を送る。
2012年株式会社ウィローズを創業。「お客様の利益を第一に」を理念に、売上高30億円を超えるグループ企業に成長。
不動産業界とお客様との情報の非対称性を解消するべくYouTube「不動産ポリス」を配信中。