# 不動産購入 # 不動産のルール
2021.05.242021.05.24

不動産業界の闇!?仲介の両手・片手問題のポリス的決着~

はじめに

不動産を購入したり売却したりする時に不動産会社に支払う仲介手数料。この仲介手数料について両手とか片手ってよく聞くけど、よくわからない。何やら闇っぽい問題を抱えてそうだけど、実際どうなの?という方が多いと思います。今回は仲介手数料のしくみから、ネットなどで一部の方が主張される「両手は悪で片手が良い」という見解の問題点について、現場のリアルな視点からきっちりとパトロールしていきます。ネットの情報は時に偏っていて危険です。ぜひご覧いただきあなたならどう考えるか教えてください。

本編

仲介手数料の基本的なしくみ

仲介手数料の基本的なしくみ

仲介手数料の両手・片手というのはこの図のように、売主様と買主様の間に2社仲介が入るのが、「片手」とか「分かれ」と言われる状態で、下の図のように1社しか仲介さんが入らないのが「両手」という状態です。

片手という状態だと、売主、買主はそれぞれ自分側の仲介会社に仲介手数料を支払うので、仲介会社はそれぞれ約3%づつの仲介手数料をいただきます。一方、両手の場合、真ん中の仲介会社は売主、買主それぞれから手数料を頂けるので、両手、つまり府合計で約6%の仲介手数料をいただくことになります。これで一般的に言われるのは、この両手の形だと、売主さんは高く売りたい、買主さんは安く買いたいという利益相反になっているものを双方代理するので、形式的ににおかしいとか、アメリカでは必ず2社入るから日本は遅れているとか、両手の方が仲介手数料倍になるので仲介会社は嬉しいから、両手を狙って「囲い込み」が発生するのが不動産の闇だという話です。

不動産業界の闇「囲い込み」

不動産業界の闇「囲い込み」

囲い込みとは、売主側の仲介会社が自社の買主で契約出来れば仲介手数料が両手=6%なのに、他社の買主で契約すると片手=3%だけになっちゃうから、他社仲介のお客様に物件を紹介させないという状態です。

こういうことから、片手分かれが良くて、両手が悪みたいな言い方をしている人が多いんですが、現役の不動産会社を経営している立場から言わせていただくと、そんなことないですし、むしろ間違っているところがあると思います。まず、この図を見て下さい。

買主からの値下げ交渉。不動産会社の動き

買主からの値下げ交渉。不動産会社の動き

売主側には売り側の仲介さんが、買主側には買い側の仲介さんが、1社づつ入った方が、正しい交渉ができる。そもそも利益相反の売主・買主を一社の仲介さんがまとめるのはおかしいという方多いんですけど、この図のように2社仲介会社が入り、5000万円の物件を4800万円で買いたいという交渉の場面になったとします。

買主から4800万円で買いたいと申込を頂いて、買い側の仲介が売り側の仲介に話をもって行きます。けど、この仲介会社同士は売主・買主当事者じゃないので、価格決められない。なので、この仲介会社2社の間で価格交渉するのではなく、売り側の仲介会社は売主に4800万円で申込がはいりましたよと話を持って行きます。ここで初めて交渉になります。要するに、5000万円で売りにでているものを4800万円で売ってもいいですか?という売主への交渉です。

よく見て下さい。このとき買い側の仲介会社は買主から200万円価格交渉お願いします!と言われて「頑張ります!」と答えているでしょう。ただ、実際に売り側の仲介を飛び越えて売主に直接交渉ができないので、価格を下げる交渉をしているのは、売り側の仲介なんです。よく考えて下さい。この売主側の仲介は売主から仲介手数料を貰って商売しているのに、売主に価格下げてくださいって交渉しているんです。全然売主のこと守ってくれてないですよね?

 

売り主からの買い上げ交渉。不動産会社の動き

それで、売主さんが4800万円は無理だけど、4900万円だったらいいよと100万円値引きができたとします。ただ買主の希望する4800万円よりも100万円高い。そうすると今度は売主から4900円だったらいいよと売り側の仲介に伝え、売り側の仲介は4900円だったらいいよと買い側の仲介に伝えます。ここでも、買い側の仲介さんは4900万円だったらいいですよ、と決められれない(買うのは買主、価格を了承するのは買主です)ので、4800万円にはならなかったけど、4900万円でどうでしょうかと買主に交渉するんです。これが2つめの交渉です。

買主に希望よりも高く買ってもらうのは売主の希望です。それを売り側の仲介が直接買主に交渉することができないので、買い側の仲介が買い上げる交渉をするんです。これもおかしくないですか?買主から仲介手数料を貰って商売しているのに、買主に高く買ってくださいと交渉しているんです。

つまり、片手仲介の場合は、自分のお客様が有利になる「交渉」ではなくて、不利になるけどしょうがないですよ、という「説得」をしているんです。多分これが現場のリアルな意見で不動産業者の方は「そうだ、そうだ」と仰って頂けると思いますが、仲介が2社入った方がそれぞれのエージェントとしてちゃんと交渉してくれるってよく言われていますが、それは現場を知っている人から見ると良く分かってないのかな。と思っています。

両手仲介ならでは。「3方よし」の決着点

両手の場合だと、売主様の意見と買主様の意見を一人の人間が直接双方と交渉して合意できる点を探るので、よっぽどちゃんと交渉しているのではないかと思います。また、両手取引の場合はこんなこともありえます。売主が4900万円で売りたい、買主は4800万円で買いたい。希望額が100万円離れていてどうしてもすり合わない。そんな時に、売主には売却金額を50万円安くしてもらうかわりに、仲介手数料を50万円下げます。売れる金額は50万円低くなるけど、払う手数料が50万円少なくなるので、手取りは変わらない。また、買主側は4800万円の希望額よりも50万円高く買ってください。その代わり仲介手数料50万円下げます。そうすれば総支払額は変わらない。仲介会社は50万円づつ手数料は下がりますが、約2%づつは双方からもらえるので、合計4%位の手数料になる。片手だと3%なので、仲介会社としても片手よりは多い。3方よしです。

2社が仲介に入っているとお互い仲介手数料を削って価格をすり合わせるということは難しいですよね。何でもそうで、中間に業者さんが何社も入ると経費が乗ります。それが産地直送だったり、メルカリさんみたいなフリマだと中間マージンが少ないので買主は安く買え、売主は高く売れます。仲介会社は1社だけの方が仲介手数料を値下げしてくれる可能性が高まります。片手で3%しかもらえないと割り引けないけど、両手で6%もらえるなら、1%位下げましょうか、という心理も働きやすいです。

このように片手が良い、両手が悪みたいな風潮はちょっと現場のリアルが伝わっていないな、と思い今回の動画でパトロールさせて頂きました。

両手仲介ならでは。「3方よし」の決着点

まとめ

Point. 1

売主と買主の間に不動産会社が1社しか入らないのが両手取引、2社入るのが片手取引

Point. 2

両手取引が悪のような風潮がありますが、現場のリアルな意見としては、全くそんなことはない!

Point. 3

むしろ両手取引の方が仲介手数料を値引いてくれる可能性が高いので、お得かも

不動産にまつわるネットの情報にこそ闇がひそんでいるかも?それに惑わされないようにしっかりと理解して不動産探しを進めていきましょう!

Point. 4

記事監修者

朝倉 大樹(宅地建物取引士)
株式会社ウィローズ 代表取締役

2000年不動産ベンチャー企業入社、28歳で最年少営業部長、29歳で最年少役員に抜擢。上場準備にも携わるが、リーマンショックによる倒産危機を経験するなど激動の20代を送る。
2012年株式会社ウィローズを創業。「お客様の利益を第一に」を理念に、売上高30億円を超えるグループ企業に成長。
不動産業界とお客様との情報の非対称性を解消するべくYouTube「不動産ポリス」を配信中。

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