はじめに
中古マンションの価格は高騰する住宅価格のなかでも群を抜いています。少しでも「値引き」してもらいたい方多いと思います。中古マンションの値引きは「可能」なのですが、それには狙っている物件の背景とタイミングが重要です。しかし逆にいい物件を購入したいなら、値引き交渉すること自体がマイナスになってしまうこともあります。
今回は「中古マンション値引きのコツ5選!」をお届けします。
本編
【中古マンション】値引きのコツ5選
最近、様々な物価が上昇してますが、不動産、特にマンションの価格も高騰していますよね。実際に、不動産価格指数を公表している国土交通省によると、マンションの価格は、住宅の中でも群を抜いて右肩上がりに上昇しております。(図1)新築が上がっているので、連動して中古マンションの価格も上がっておりますので、気に入っても「高い!」「予算オーバー!」という事になってしまうので、少しでも「値引き」してもらえないかなと思う方、多いのではないでしょうか。
マンションの値引き交渉ですが、結論からお伝えしますと、「可能」なんですね。しかし、マンションの値引きには狙っている物件の背景とタイミングが重要になってきます。また、逆にいい物件を購入したいなら、ダメ元でも値引き交渉すること自体がマイナスになってしまうこともあります。そこで今回は「中古マンション値引きのコツ5選!」ということでご説明させて頂きます。内容としては、
①交渉のタイミング
②売主はだれか
③法人の事情について
④築古物件
⑤値下げ交渉してはいけない物件
について解説していきます。
中古マンションの値引きに関して、もっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にして下さい。
◆ぶっちゃけ、中古マンションって値引きしてもらえる? 超得する買い方教えます。
図1
①交渉のタイミング
まず最初のポイント、「値引き交渉のタイミング」ですが、これはちゃんと購入意思を示すという意味で申し込み=買い付けをするタイミングで行ってください。内覧した時に、いきなり売主さんや仲介会社さんに「交渉できますか!」と聞いても、売主側の心情ですと、まだ買うかどうかもわからないのに腹を割ったここまでは値引き可能ですよ。という本心を聞けるはずもありません。交渉のタイミングとしては「この価格になれば買うのでどうでしょうか?」という「購入申込書」を出すタイミングになります。
また、この時点で既に住宅ローンの事前審査を通っていることも大切です。買えるかどうかわからないのに交渉に応じるというのも売主の心理を考えると、ちょっと難しい話ですよね。事前審査がまだの場合は、購入申し込みと同時に事前審査も並行して進めましょう。
②売主は誰か
2つ目のポイントは、「売主が誰か」です。具体的には個人か法人かによって、値引き交渉の仕方がかわります。もちろん、どっちであっても相場に反した値引き交渉や強引な値引き交渉を押し付けてしまうと、心証を害し、価格交渉が無くてもお得なような、条件がもともと良い物件も、「この買主ちょっと嫌だなぁ」と思われてしまい、満額で買うと言っても売ってもらえなくなってしまう可能性もあるので、しつこく交渉したり、相場に反した交渉をする事はかえってマイナスです。相手も人間ですから、マンションの値引き交渉を成功させたいなら、相手の大切な不動産になりますので、譲歩や理解は必要だと思います。
まず売主が「個人」の場合についてです。売主の方が個人の場合には、売却までの「時間的な余裕」とマンションに対する懐具合によって値引きができるのかどうかが変わってきます。そもそも、「個人」が売主なのか、「法人」が売主なのかを見分けるためには、販売図面に記載されている「物件価格」が(税なし)か(税込)のどちら記載であるかで見極められます。
法人の場合であれば、消費税課税業者の場合がほとんどですので、販売図面には(税込)とか記載されています。一方で、個人であれば、(税なし)とか(非課税)という風に記載されている事が多いです。そこで売主が個人か法人か見分ける事が出来ます。
売主の方が個人の場合ですが、交渉出来るかどうかは、売主さんが売却まで時間に余裕があるかどうかによります。もう1年でも2年でも良い条件で購入してくれる方がいるまで待ちますよ。という方であれば、大幅な価格交渉はまず無理でしょう。逆に、相続や住み替えなどの理由で、早く売却して現金化したいという方であれば、値引き交渉がしやすいです。いわゆる、「売り急ぎ」の現象が起こっている場合には、100万円単位の値引きが期待できます。無理な値引き交渉は売主の方にとっても気分の良いものではありません。不動産会社の担当と相談して、上手に落としどころを探っていくことが重要です。物件が気に入っていること、どうしても購入したいことをお伝えしながら、値引きしてもらいたい理由を丁寧に伝えましょう。また、不動産物件の価格は「5480万円」「3480万円」などの末尾が「80」となっていることが多いです。この「80万円」の範囲は値引き交渉用という部分もあるので、値引きに応じてくれることが比較的多いというのも事実です。
一方で、売主が法人・宅建業者の場合です。この場合、個人の方と比べて、値引き交渉に応じてくれる可能性は基本的には低めかなと思います。法人の場合は、物件の仕入れからリフォーム代金などの諸費用・税金を計算し、利益を上乗せして販売価格を決定しているので、値引き交渉は会社としての利益目標が取れないとか、その物件の担当者個人の売上目標の達成などもありますので、値引き交渉はシビアになる事が予想されます。法人が売主、特に不動産業者が売りに出している中古マンションの値引きを狙うのであれば、値引き交渉のタイミングが重要でして、そのタイミングとは、売れ残っている物件を狙っていくということになります。
例えば、リフォームをして販売する物件であれば、そのリフォーム中は値引きはほぼ通りません。売主側もリフォームが完成してオープンルーム等をやれば売れるだろう。と思っている。それは当然だと思います。それがリフォームが完成しても売れないという状況であれば、価格を下げていくしかないということになるので、値引き交渉通りやすいということになります。建売住宅の場合でも同じですよね。完成前の物件の値引きはほとんど通りません。完成後に売れ残っているのであれば、売主としても「売れ残り物件」の印象を与えてしまうので、「早く売りたい」という感覚に移っていくので、値引き交渉がしやすくなります。法人が販売する中古マンションでいうと、リフォーム中の物件ではなく、リフォームが完成して販売後数か月経っている物件、ということになりますね。
③法人側の事情
価格交渉のポイント3つ目、「法人の事情」です。先ほど物件が売れ残った場合に価格交渉がしやすいとお伝えさせて頂きましたが、それ以外に売主法人の事情でマンション価格が下がりやすい値引きの適したタイミングが2つございます。
1つ目が、売主の決算期に近い事。もう1つは、売主が物件を仕入れてから1年を迎えるタイミングとなります。
まず売主の決算期についてですが、多くの不動産会社はこの物件は今期の売上、この物件は来期でいいか。と売上計画を立てています。今期の売上に入れたいけれども決算月の2か月前になっていても売れていなければ、価格を下げてでも今期に売り切ろう。そう考える会社とても多いんですね。不動産会社も3月が決算月という会社が多いと思いますが、その場合、この物件今期に入れたい。という法人であれば、1月末から2月にかけて、在庫物件をバーゲンセール価格にして売り出す場合があります。この時期も100蔓延単位の値引きが通りやすい時期になります。
もう1つ値引き交渉が狙える時期としてあげられるのが、「売主が物件を仕入れてから1年経過」しそうな物件です。一般的に宅建業者が物件を仕入れるためには、金融機関から融資を受けて、購入していることがほとんどです。このようなケースでは、当然金融機関に売れたら返済しなくてはならないのですが、その借入期間が基本的には1年になっている事が多いです。例えば、3000万円の物件に対して、融資を受けて購入し、リフォームを加えてから4000万円で市場に出した場合、1年を経っても物件が売れ残っている場合には、手元の資金で3000万円の借入を返済する必要が出てきます。このような場合、多少の赤字が出てきてしまっても、台所事情によっては、3000万円現金で支払うのは無理なので、値引きをしても売り切らなければならないという状況になります。また販売が長期化すると、赤字になっても早めに手放して、次の事業資金にあてたいと事業者は考えるので、いわゆる損切りされる場合もあり、その意味でも販売から1年というのは狙いどころと言えるでしょう。
④築古物件
値引き交渉のコツ4つ目は、「築古物件」の場合です。中古マンションは古い物件の方が、比較的値引き交渉はしやすいと言えると思います。実際に、公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」のデータによると、築年数別の中古マンションの売り出し価格と実際の成約価格との差は、築年数を経過するごとに大きくなっています。(図2)
例えば、築年数0〜5年の平均売り出し価格は6203万円で、平均成約価格は5883万円となり、5%程度の値下げとなっております。一方、築年数26年〜30年となると、平均売り出し価格2107万円で、平均成約価格は1884万円となり、10%程度の値下げ率になっています。また、築年数が古い物件で、旧耐震物件と言われる、昭和56年6月より前の建築確認によって建てられた物件は、日に日に住宅ローンが通りにくくなっています。買いたい!という人が現れても、住宅ローンが組めなければ買えないですから、売れ残っている場合が多くなってきています。築浅の人気物件、引く手あまたの物件に比べると、築古の物件の方が価格交渉はしやすいと言えると思います。
図2
⑤値下げ交渉してはいけない物件
最後のポイント、「値下げ交渉をしないほうがいい物件」についてです。
こちらは2つあり、1つ目は人気の物件、2つ目は資産価値の高い物件です。
1つ目は人気の物件について、言うまでもないですが、あなたがものすごく気に入った物件は、ほかの方も気に入っていて、とても人気の物件かもしれません。その場合値下げ交渉などという悠長なことをやっていては、その物件、他の方にすぐとられてしまいます。気に入った物件にほかに購入希望者がいるかどうかは、担当の営業マンに確認するしかないですが、営業トークで「人気です!」「話入ってしまいますよ!」といって煽っているんじゃないの?と疑心暗鬼になってしまう事もありますよね。不動産売買に関しては信用できる担当との出会い、これは本当に大事です。実際、申し込みが複数重なってしまったり、物件を売り出して1週間で何件も申込が入る物件は結構ざらにありますので、本当に良い物件を取り逃さないためにも営業マンとの信頼関係の構築はとっても大切だと思います。
また、2つ目のリセールの期待できる資産価値の高い物件、シンプルに相場より安い物件も値下げ交渉に向かない物件です。不動産は高く買っても、将来高く売れればそれで価値がありますし、安く買えたけど、将来も安くしか売れないなら価値は無いかもしれません。購入予算の範囲で資産価値の高い、リセールの期待できる物件と出会ったなら、迷わず早めに判断することをおすすめします。交渉している間に他の方に取られてしまったり、それなら売らないや。と売るのを辞めてしまったりする事があります。機を逃さないということがとても大切だと思います。
このように、他に購入希望者がいるような物件の場合には、売主としても良い条件をだしてくれる買主と取引したいと考えるので値引き交渉の可能性は低くなってしまいます。利便性の高い駅近の物件や、人気エリアの物件を検討している方であれば、他にもライバル購入者がいるため、購入の判断はお早めにされることをおすすめします。
いかがでしたでしょうか。「【中古マンション】値引き交渉のコツ5選」というテーマで解説してきました。マンションの値引きを成功させるには、今回解説したような物件が売られている背景やタイミングを調査しておくことが重要です。予算の都合上、値引き交渉しないとマンション購入が難しいという方は、信頼できる不動産会社と相談しながら、物件を探していくことも重要です。是非、参考にしていただければ幸いです。
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まとめ
記事監修者
朝倉 大樹(宅地建物取引士)
株式会社ウィローズ 代表取締役
2000年不動産ベンチャー企業入社、28歳で最年少営業部長、29歳で最年少役員に抜擢。上場準備にも携わるが、リーマンショックによる倒産危機を経験するなど激動の20代を送る。
2012年株式会社ウィローズを創業。「お客様の利益を第一に」を理念に、売上高30億円を超えるグループ企業に成長。
不動産業界とお客様との情報の非対称性を解消するべくYouTube「不動産ポリス」を配信中。