はじめに
近年、あらゆる物価が上昇する中で、不動産、特にマンションの価格高騰が顕著になっています。
国土交通省が公表する不動産価格指数※によると
マンションの価格は住宅カテゴリの中でも群を抜いて右肩上がりに推移しています。
新築マンションの価格上昇に連動して中古マンションも値上がりしているため、
予算オーバーという状況に陥り、少しでも値引きしてもらえないかと考える方も多いでしょう。
結論から言えば、中古マンションの値引き交渉は可能です。
ただし、成功させるためには狙っている物件の背景や交渉のタイミングが極めて重要になります。
また、良質な物件の場合は、値引き交渉自体がかえってマイナスになることもあるため注意が必要です。
今回は中古マンション値引き交渉を成功させるためのポイントをご紹介します。

本編
最適な値引き交渉タイミングとアプローチ法
交渉は必ず「購入意思を明確に示す」タイミング=申込(買い付け)の段階で行いましょう。
内覧時にいきなり「値引きできますか?」と尋ねても効果的ではありません。
売主側からすれば、まだ購入するかどうか決まっていない段階で
「ここまでなら値引き可能です」と本音を明かすことはないでしょう。
効果的な交渉タイミングは、
「この価格であれば購入します」という意思表示と共に
「購入申込書」を提出するタイミングです。
このとき、住宅ローンの事前審査を既に通過していることも重要なポイントです。
購入能力が不明確な状態では、売主も交渉に応じる理由がありません。
事前審査がまだ完了していない場合は、
購入申し込みと並行して住宅ローン審査も進めましょう。
こうした準備が整っていることで、交渉力が格段に高まります。
売主が不動産会社の場合値引きしない方が良い?売主タイプ別・効果的な値引き戦略
売り主が個人と法人では、交渉時のアプローチが大きく異なります。
どちらのケースでも、相場を無視した過度な値引き要求や強引な交渉は逆効果です。
良条件の物件であっても、売主に「この買主は対応しづらい」
という印象を与えてしまうと、満額提示しても取引を断られる可能性があります。
値引き交渉は、相手の立場や事情を尊重した上で進めることが重要です。
▮個人が売主の場合
個人が売主の場合、
値引き可能性は「売却までの時間的余裕」と「資金状況」に大きく左右されます。
まず、個人売主か法人売主かを見分けるには、
販売図面の「物件価格」表示をチェックしましょう。
法人の場合は「税込」と記載されていることが多く、
個人の場合は「税なし」や「非課税」と表示されています。
個人売主の場合、時間的余裕がポイントです。
「1〜2年かけても良い条件の買い手を待つ」という売主に対しては、
大幅な値引き交渉は難しいでしょう。
一方、相続や住み替えなどの理由で早期現金化を望む
「売り急ぎ」状態の売主であれば、100万円単位の値引きも可能です。
効果的な交渉には、不動産会社の担当者と連携して
適切な落としどころを探ることが重要です。
物件への強い購入意欲を示しながら、値引き希望の理由を丁寧に説明しましょう。
また、物件価格の末尾「80万円」(5480万円など)は、
しばしば交渉余地として設定されていることも覚えておくと良いでしょう。
▮法人・宅建業者が売主の場合
法人売主の場合、個人と比べて値引き交渉の成功率は一般的に低くなります。
これは、物件仕入れ費用、リフォーム代、諸経費、税金に
利益を上乗せして価格設定しているためです。
また、会社の利益目標や担当者の売上目標も関係するため、交渉はより厳しくなります。
売れ残りマンションは値引きされやすい
法人が売り出す中古マンションで値引きを狙うなら、]「売れ残り物件」が狙い目です。
リフォーム中の物件は値引き可能性が低く、
リフォーム完了後に売れ残った物件ほど交渉余地が広がります。
リフォーム完成から数カ月経過した物件は、
売主側も「早く売りたい」という心理が働くため、
値引き交渉が通りやすくなります。
建売住宅と同様、完成前の物件より完成後に売れ残った物件の方が、
「売れ残り」印象を避けたい売主心理から値引き交渉に応じやすくなります。
法人売主の事情を活かす
すでに「売れ残り物件」の値引き交渉のしやすさについてお伝えしましたが、
それ以外にも法人売主の事情から値引き交渉が有利になるタイミングが2つあります。
▮決算期を狙った値引き交渉
多くの不動産会社は物件ごとに
「今期の売上に計上するか、来期にするか」という売上計画を立てています。
特に決算月が迫っている状況で今期の売上に入れたい物件が売れ残っていると、
価格を下げてでも早期売却を目指す傾向があります。
例えば、多くの不動産会社の決算月である3月を控えた1月末から2月にかけては、
決算対策として在庫物件を「バーゲンセール価格」で放出するケースがよく見られます。
この時期は100万円単位の値引きが通りやすく、
購入者にとって大きなチャンスとなります。
▮仕入れから1年経過のタイミング
不動産業者が物件を仕入れる際には、
通常、金融機関からの融資を利用しています。
この融資の返済期限は基本的に1年に設定されていることが多いのです。
具体例を挙げると、3,000万円で仕入れた物件にリフォームを施し、
4,000万円で販売したものの、1年経過しても売れ残った場合、
業者は融資元への返済期限に直面します。
多くの場合、手元資金での一括返済は難しいため、
多少の赤字覚悟で値引きしてでも売却する「損切り」状態になります。
さらに売れ残りが長期化すると、
赤字でも早期に売却して次の事業資金に回したいという心理が働きます。
そのため、物件の販売開始から約1年が経過したタイミングは、
値引き交渉の絶好のチャンスだといえるでしょう。
これらの法人売主の事情を理解し、タイミングを見計らうことで、
通常では難しい大幅値引きが実現する可能性が高まります。
不動産会社との良好な関係を築きながら、
こうした情報を集めることも成功の鍵となります。
築古物件は値引き交渉がしやすい
中古マンションは築年数が古い物件ほど、値引き交渉がしやすい傾向にあります。
公益財団法人東日本不動産流通機構の
「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」のデータでは、
築年数が増えるにつれて売り出し価格と成約価格の差が大きくなることが示されています。

(参考)東日本不動産流通機構|築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)
具体的には、築5年以内の物件は
平均売り出し価格6203万円に対し平均成約価格5883万円で、
値下げ率は約5%です。
これに対し築26〜30年の物件では平均売り出し価格2107万円、
平均成約価格1884万円となり、値下げ率は約10%に上昇します。
さらに、1981年6月以前の建築確認で建てられた
旧耐震基準の古い物件は、住宅ローン審査が厳しくなる一方です。
購入希望者がいても融資が受けられず購入できないケースが増え、
売れ残りが多くなっています。
このように、人気の高い築浅物件と比較すると、
築古物件の方が売主は価格交渉に応じやすく、
買主にとって有利な条件を引き出せる可能性が高いと言えます。
値引き交渉を避けるべき物件の見極め方
最後のポイントは「値下げ交渉をしないほうがいい物件」についてです。
これには2つのケースがあり、
1つ目は人気の物件、2つ目は資産価値の高い物件です。
▮人気の物件
人気物件場合、値下げ交渉をしている間に他の購入希望者に先を越されてしまうことがあります。
物件に他の購入希望者がいるかどうか担当営業に確認するしかありませんが、
営業トークに疑いを抱くこともあるでしょう。
不動産売買では信頼できる担当者との出会いが非常に重要です。
実際、複数の申し込みが重なったり、
物件を売り出して1週間で何件も申込が入る物件は珍しくありません。
良い物件を逃さないためにも、営業担当者との信頼関係の構築はとても大切です。
▮資産価値の高い物件
リセールバリューが期待できる資産価値の高い物件や、
単純に相場より安い物件も値下げ交渉には向きません。
不動産は高く買っても将来高く売れれば価値があるからです。
そのため、購入予算内で資産価値の高い将来の売却も期待できる物件と出会ったなら、
迷わず早めに決断しましょう。
交渉している間に他の方に取られてしまったり、
売主が販売を中止してしまうこともあります。
このように、他に購入希望者がいる物件の場合、
売主も良い条件を出してくれる買主と取引したいと考えるため、
値引き交渉の可能性は低くなります。
利便性の高い駅近の物件や人気エリアの物件を検討している方は、
他にもライバル購入者がいるため、購入の判断は早めがおすすめです。
まとめ
中古マンション値引き交渉の成功率を高めるチェックポイント
マンションの値引きを成功させるには、
今回解説したような物件が売られている背景やタイミングを調査しておくことが重要です。
予算の都合上、値引き交渉しないとマンション購入が難しいという方は、
信頼できる不動産会社と相談しながら、物件を探していくことも重要です。
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記事監修者
朝倉 大樹(宅地建物取引士)
株式会社ウィローズ 代表取締役
2000年不動産ベンチャー企業入社、28歳で最年少営業部長、29歳で最年少役員に抜擢。上場準備にも携わるが、リーマンショックによる倒産危機を経験するなど激動の20代を送る。
2012年株式会社ウィローズを創業。「お客様の利益を第一に」を理念に、売上高30億円を超えるグループ企業に成長。
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